サテライト・トラッカでISSとスターリンクを見る、動画付き

2023年12月10日

ISS(International Space Station 国際宇宙ステーション)やStarlink(スターリンク)といった人工衛星を肉眼で観測するには、Vito Technology Inc.Satellite Tracker(サテライト・トラッカ)というスマホアプリ(App StoreGoogle Play)が一番おすすめです。

同じVito Technology Inc.のStar Walk 2でも、ある程度は人工衛星の追跡はできますが、Satellite Trackerは下記の点でStar Walk 2よりも優れています。

Satellite TrackerStar Walk 2
直近30回の観測機会の日時、視等級、最大迎角が分かる
(5~7日後の出現まで事前に知ることができる
 明るく高い位置まで上がる出現を簡単に絞り込める)
次の一回だけの観測機会の時刻のみが分かる
日付は分からない
視等級、最大迎角は分からない
100個までの人工衛星を同時にリアルタイムに追跡できる
(スターリンクの銀河鉄道状態を画面上で確認できる)
同時に追跡できる人工衛星はひとつ
 
地平上に現れたとき、スマホに通知できる通知機能は無い
人工衛星機能でSatellite TrackerがStar Walk 2より優れているポイント

つまり、「今~数十分後までに観測できる人工衛星を探したい」というならStar Walk 2でも何とかなりますが、「数日先までで一番よく見える人工衛星がどれで、いつかを知りたい」、「スターリンク衛星の銀河鉄道状態を探したい」という場合には、サテライト・トラッカが無くてはならない、ということが分かります。

今回は、サテライト・トラッカを使ってISSとスターリンクを観測する手順を紹介します。

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ISSを見る

5秒:人工衛星の名前で検索することができます。ここではISSをタップしました。リアルタイムで現在位置が表示されます。

16秒:観測可能な直近5回のデータが表示されます。次に見えるまでの時間と、直近5回の出現の日時、視等級、最大迎角が見られます。一番明るい恒星であるシリウスで-1.46等級 [1]、金星が一番明るいときで-4.87等 [1] ですから、金星並みに明るいということが分かります。

18秒:「すべての通過」をタップすると、直近30回の出現を一覧できます。ただし、観測することができない回も含まれています。「日光」とあれば、昼間なので見ることができません。

29秒:画面下の人工衛星アイコンをタップすると、人工衛星の3Dモデルを見ることができます。

40秒:画面下の一番右のアイコンをタップすると、人工衛星の天空上の現在位置が分かります。

出典
1. Wikipedia

スターリンク衛星を見る

ひとつのスターリンク衛星を見る

まずはひとつのスターリンク衛星を観測してみます。

10秒:衛星データベースでひとつのスターリンク衛星を選択すると、現在位置が表示されます。

16秒:観測可能な直近5回のデータが表示されます。次に見えるまでの時間と、直近5回の出現の日時、視等級、最大迎角が見られます。

20秒:観測したい出現があれば、時計マークをクリックして通知を設定することができます。このとき、視等級が明るく、最大迎角が高いものを選ぶといいでしょう。ここでは、条件が良い二回に通知を設定しました。

参考までに、私は都内の住宅街に住んでおり、一番近い商業ビルまでは200mほど離れています。この環境で、恒星は3.5等くらいまで見えます。しかし、2等と表示されているスターリンク衛星が全く見えないときがあります。スターリンク衛星は一番明るくても2等程度なので、確実に見るには、やはり光害が少ない、観測環境がよいところに行く必要がありそうです。

最大迎角について言うと、少なくとも20°程度は欲しいところです。迎角が低い出現のときは、建物や木が邪魔になるので、かなり開けたところに行かないと見ることができません。

28秒:「すべての通過」をタップすると、直近30回の出現を一覧できます。ただし、観測することができない回も含まれています。「日光」とあれば、昼間なので見ることができませんし、「光なし」とあれば、観測できる方角にあるものの、太陽光を反射しておらず、やはり見ることができません。

42秒:画面下の人工衛星アイコンをタップすると、人工衛星の3Dモデルを見ることができます。

57秒:画面下の一番右のアイコンをタップすると、人工衛星の天空上の現在位置が分かります。

連なったスターリンク衛星を見る

次に、幾つも連なって見えるスターリンク衛星を探す手順を紹介します。

8秒:衛星データベースから、ひとつのスターリンク衛星のグループを選びます。ここでは「STARLINK 6-29 (L123)」を選びました。

「スペースXのスターリンク」よりも下にある各行は、ひとつのロケットで打ち上げられた人工衛星です。連なったスターリンク衛星を探すには、ひとつの行を選んで、その中の人工衛星を選ぶとよいです。

また、打ち上げられた日の降順でソートされています。打ち上げられてから日が浅いほど、明るく、より固まっていて銀河鉄道のように見られる可能性が高いので、一番上の行から順番に観測候補を探すとよいでしょう。

12秒:予定通過時刻が近いものを選んで「追跡する」をタップして行きます。ここでは予定通過時間まであと16~20分のものを選びました。追跡リストには最大で100個までの人工衛星を追加できるので、足りなくなることはまずないでしょう。バンバン追加していきます。

36秒:「追跡する」をタップした人工衛星の中からどれでもいいのでひとつをタップします。銀河鉄道状態ができあがっていることが分かります。

48秒:画面右上の時刻表示で、あと16分ほどで日本上空に来ることが分かります。まだ8,000km、地球の4分の1周ほどありますが、すぐですね。

1分15秒:日本上空に現れてから、もう一度見てみました。スターリンク計画が始まるまで、こんなにたくさんの人工衛星を一度に見られることはなかったので、楽しいですね。

過去の銀河鉄道のようなスターリンク衛星

2023年は、スターリンク衛星が「銀河鉄道のようだ」として度々報じられた初めての年でした。テレビで報道を目にした方も多かったのではないでしょうか。その中で、分かりやすい映像になっているものを幾つか集めてみましたので紹介します。

銀河鉄道!?オーロラライブカメラに映った「スターリンクトレイン」(ウェザーニュース チャンネル)

下の動画は、itami_planetariumさんの動画です。電柱、電線と比較できるので、スターリンク衛星の明るさ、速さ、間隔などたくさんのことが分かる、とても興味深い動画です。

夏の夜に銀河鉄道?(スターリンク衛星)(itami_planetarium チャンネル)

銀河鉄道風スターリンク衛星を事前に知って観察する

「銀河鉄道」状態のスターリンク衛星を見るには、打ち上げられてから数日以内のものが、いつどこで見られるかを把握する必要があります。日が経つにつれて人工衛星の間隔が広がって行き、5日もすれば、人工衛星同士の間隔が2°ほどになってしまうからです。また、軌道高度も徐々に高くなっていくので、段々と暗くなっていきます。

ただ、間隔が広がっても、銀河鉄道っぽさはなくなりますが、壮観な眺めではあるので、充分楽しむことができます。スターリンクのプロジェクトが始まるまでは、人工衛星が2個以上連なって見られることなんて皆無でしたから。

スターリンク衛星の今後の打ち上げ予定については、下記のサイトを情報源とするとよいでしょう。どちらのページもほぼ毎日のように更新されており、打ち上げの1~2日前に知ることができます。どちらのページも、打ち上げの時刻はグリニッジ標準時で記載されています。日本時間を知るには+9時間してください。

次の打ち上げ予定か、直近で打ち上げられたもので二~三日しか経っていないものが分かったら、サテライト・トラッカ―で追跡リストに追加して観察します。連なったスターリンク衛星を見るの手順を参照してください。


スターリンク衛星の打ち上げ後の動きについて、少し詳しく見て行きます。

下の表は、スターリンク衛星の打ち上げ時期ごとに、ごく一部をピックアップして、軌道高度と視等級を比較したものです。視等級は、サテライト・トラッカで直近30回の出現で一番明るいときを調べたものなので、大まかな目安です。

軌道高度は三か月程度で一定の高さに達し、4等前後で安定することが分かります。

グループ [2]人工衛星 [2]打ち上げ日 [3]軌道高度 [4]視等級 [2]
STARLINK 6-31 (L125)STARLINK-309852023/12/32.1
STARLINK 6-30 (L124)STARLINK-309772023/11/28281.09km2.3
STARLINK 6-27 (L120)STARLINK-308832023/11/08453.13km3.8
STARLINK 7-1 (L100)STARLINK-303212023/08/22522.27km4.9
STARLINK 3-5 (L80)STARLINK-55502023/04/27592.58km3.6
STARLINK 4-2 (L60)STARLINK-47632022/09/11539.46km3.4
STARLINK 4-10 (L40)STARLINK-36542022/03/09545.06km3.9
STARLINK-19 (L20)STARLINK-20952021/03/11547.48km5.8
STARLINK-1 (L2)STARLINK-10072020/01/07556.44km2.6
スターリンク衛星の打ち上げ時期と軌道高度、視等級の関係

出典
2. サテライト・トラッカ
3. Star Walk 2, Wikipedia, HEAVENS ABOVE
4. Star Walk 2

サテライト・トラッカの人工衛星データは最新

以前、「星座表」でアップグレードを買うなら「星座表∞」がお得!で紹介したように、星座表のISSのデータは間違っていますし、スターリンクのデータは掲載されていません。

一方、サテライト・トラッカでは、現在も最新の人工衛星データが追加され続けています。実際、2023年12月3日に打ち上げられたスターリンク衛星のデータは、翌日には掲載されていました。

App Storeなどのバージョン履歴を見ると、バージョン1.4.4と1.4.6との間は1年ほど空いていますが、アプリ内の「クレジット」からバージョンを見ると、もっと細かくバージョンアップされていることが分かります。また、アプリ内で見られるバージョンが変わっていなくても、人工衛星データのアップデートは数日ごとに継続して行われています。

日付バージョン
2023/12/031.4.4.175 2820a76
2023/12/051.4.6.35 2954589e
2023/12/091.4.6.35 2954589e
アプリで表示されるバージョン情報の履歴

サテライト・トラッカの価格

サテライト・トラッカの価格は一か月あたり50円です。一回きりの買い取りの価格設定はありません。もしあれば、是非購入したいのですが…

サブスクリプションを中断したり再開したりは何度でもできるので、「ずっと継続するのはもったいない」という場合は、例えば観測のための遠征時だけ契約する、ということもできます。ちなみに二回目以降のサブスク時には、一週間の試用期間は無くなります。